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地域内外ともに絶大の人気がある「高畠ワイナリー」にお邪魔してきたんだッし!【パート1】

ぶどうの主産地であるおきたまには、有名なワイナリーがたくさんあるんだっし!
今回はその中でもおきたま地域内だけでなく、首都圏等の地域外の方々からも深く愛され、おきたまの観光名所のひとつとなっている「高畠ワイナリー」さんにお邪魔させていただいて、色々とお話を聞かせていただいたんだっし。

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今回ご協力いただいた高畠ワイナリー製造部長の川邉さんだっし。
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おきたま新聞(スマイリー)
今日はお忙しい中、お時間いただきましてありがとうございます。
さっそくなのですが、今年の新酒を見せていただいてもよろしいですか?

川邉部長
シャルドネの新酒はこれだね。
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通常シャルドネの新酒の解禁日は12月の2週目あたり。 うちのワイナリーでは11月に出せるという強みがあるんですよ。
デラウェアの新酒は完売してここには無いんだ。 高畠のヤマザワにいけば買えると思うよ。

おきたま新聞(スマイリー)
えぇーーー!? もう完売したんですか。
これは急いでヤマザワに行かなきゃなんねなっし。

川邉部長
瓶ならインフォメーションルームに飾られてあるよ。
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おきたま新聞(スマイリー)
おぉぉ、ラベルがまたオシャレだなっし。

川邉部長
新酒のワインラベルのデザインは東北芸術工科大学の学生さんが描いたものなんだ。 毎年、新酒ワインに対するビジュアルデザインを競うコンペに参加してもらい、審査してその年のラベルを決めている。 学生さんも履歴書に書けるからいいでしょ。

おきたま新聞(スマイリー)
私だったら履歴書どころか一生自慢しますね(笑)
恥ずかしながらワインについてあまり詳しくないので…、新酒について教えておごえなっし。

川邉部長
新酒はその年に採れたぶどうのワインの若々しさを味わえるので年々需要が高まっているが、その一方で新酒をつくるワイナリーは減ってきているんだ。 解禁日が決まっている新酒は、製造側からするとケツが決まっているため負担が大きく、最近でもやめてくワイナリーが多いのが現状だ。 デラウェアの新酒で例えるなら、うちでは9月24日にケツが決まっているのに対し、8月にデラウェアがどんどん入荷してくる。 発酵に10日前後かかり、そこから更にろ過等で時間がかかってくる。 うちには遠心分離機や高性能フィルタがあるから時間を短縮できるけど、普通ならこの過密な製造過程に耐えるのは厳しいんだ。

おきたま新聞(スマイリー)
遠心分離機とか初めて聞くんですが、ろ過の時間を短縮することで味が変わったりするんですか?

川邉部長
ろ過の時間は影響しないけど、ろ過の回数が増えると味はおちるよ。 他にも瓶詰めでも味が落ちる(ボトリングショック)から通常のワインは休ませて味を戻してから出荷するんだ。

おきたま新聞(スマイリー)
なるほど。 奥が深いなっし。
他に新酒の製造で大変なことってあるんだべか?

川邉部長
あるよ。 ワインに使われるデラウェアは着色が不十分だったりして生食用に使えないものを加工用として受取るんだけど、気候で左右されやすいから毎年入荷量が異なってくる。 原料の入荷量がわからないという博打的なところがあるのに対して、お店には決まった数量を納めていくでしょ。 特にうちでは甘口、辛口、スパークリングの3種類を出すのでたくさん使う。 もちろん新酒以外のワインもあるから全量使うことができない。 毎年入荷量に頭を悩ませているんだよ。

おきたま新聞(スマイリー)
それは解決できる問題なんスか?

川邉部長
契約で種ありデラウェアの栽培をしてくれる農家を集っているんだ。 新規就農者は増えているけど、それ以上に農家の高齢化が進んでいる状態でしょ。 デラウェアの生産者でも生食用を作るのがきつくなっている人も出てきている。 その方々に種ありデラウェアの栽培を勧めているんだ。

おきたま新聞(スマイリー)
それだと逆にたくさん入荷したときに困るんじゃないべか?

川邉部長
全く問題ないよ! 現状足りない状態が続いているし、もし契約農家さんが増えて潤沢に入荷してきても新しい商品案が2つ程あるからね。

おきたま新聞(スマイリー)
高畠ワイナリーさんの受け皿すごすぎッス。
話が変わりますけど、これからTPPにより安い海外ワインがたくさん入ってくると思いますが、この先の販売戦略をお聞かせいただけますか?

川邉部長
日本ワインはそれほど影響を受けないと考えているよ。 日本ワインは外国のワインに負けないブランド力をつけているからね。 そっから落ちるか維持・向上していくかはこれから次第だな。 むしろTPPで厳しくなっていくのは薄利多売の目的で生産している外国のワインメーカーでしょ。 TPPが始まると関税がほとんど消えて今まで手がつけにくかったワインの含め、全体の値段が落ちるから生き残りをかけた戦いが起こる。
また、日本ワインと外国の高いワインがバッティングする可能性もかなり低いと考えている。 ワインを仕入れるインポーターには大きく2種類に分けられるんだ。 それは在庫を持つか持たないか。 お店で例えるなら、お客さんがお店に入って好きなワインを選ぶ表口(在庫を持つインポーター)とお客さんから注文を受けてからワインを仕入れる裏口(在庫を持たないインポーター)がある。 高価格帯のワインを買うお客さんのほとんどは裏口を利用して仕入れるから、日本ワインの販売に直接影響することはない。 それを考えると在庫を持つ中小のインポーターさんはこれから厳しい戦いになってくるね。

おきたま新聞(スマイリー)
テレビでしか見たことがないようなワインって何処で手に入るか疑問だったけど、そういうことだったのか…
それなら国内のワインメーカーは安泰だなっし(嬉)

川邉部長
そんなことないよ。 現在、国内でのワインの消費割合は国産ワインが1/3、外国産ワインが2/3となっている。 外国産ワインを嗜むお客さんに日本ワインのPRをしてお客さんを捕まえていかないと! 実際、飲んでもらった後、日本ワインだと教えるとビックリして、そのまま常連客になるお客さんも少なくない。
それとワイン消費を金額ベースにすると年間4億円のうち1億円は東京だって知ってた? もちろん人口の違いはあるけど、それ以上に地方に流通していないのが大きい。 お酒飲もうって思ったとき日常的にワインって買わないでしょ? ワインが地方に定着していないというのが難点になっているんだよ。
そして現在、一番大変なのが産地表示基準の改正だね。 国税庁により国産ワインの表示ルールが見直され、平成30年から施工されるんだ。 そのルールにより産地名の入ったワインは同一産地のぶどうを85%以上原料として使用しなければ産地名を表のラベルに標記してはいけないこと、同じく品種名の入ったワイン同一のぶどう品種を85%以上使用しなければいけないことになる。 うちを含め朝日町ワインや熊本ワインなどは「会社名を入れたワイン」=「産地名が入ったワイン」ってなるでしょ。 今までは業界の自主ルールで75%以上使用しなければならないと決めていたが、今回のルールで85%以上にあがった。 実際、85%以上をその産地で集めるのって結構厳しい条件なんだよ。 元々たくさん生産していなかった地域ではまず不可能に近い条件なので、会社名を改名するところもでてくるだろうね。
また、日本ワインの表示についても改正される。 今までは輸入した濃縮果汁を使ったり、輸入ワインをブレンドしても国内で製造していれば国産ワインとして表示できた。 こちらも業界の自主ルールで国産ぶどうを100%使用した場合は日本ワインと表示しないこととなっていたが、改正により正式に同ルールが施工される。 実質、日本で消費されるワインの33%は国産ワインと伝えたが、そのうち日本ワインと呼べるのはわずか8%なんだ。

おきたま新聞(スマイリー)
それじゃあ、これから日本ワインってかなり希少な商品になっていくんですか!?

川邉部長
国税庁に日本ワインの表示についてメイか?マストか?と尋ねたらマストだと返答がきた。 日本ワインの製造量は年々10%ずつ増えているからそこまで心配することないと思うよ。

おきたま新聞(スマイリー)
最後に日本ワインの強みについて教えておごえなっし。

川邉部長
日本ワインの一番の強みはワイナリーが近くにあることだね。 外国のワイナリーに行きたくても旅費がバカにならないけど日本のワイナリーなら無理せず行けるでしょ。 実際にワインを作っているところを見て、製造している人と話し、そこのワインを試飲する。 この見る・聞く・味わうの3つを体験してもらうことでお客さんへの関心と興味を引き付けファンを増やすことができる。 それだけで全然違うよ。 山梨ではワイナリーを巡るワインツーリズムに取り組んでいるほど力を入れているんだ。 うちも観光関係の業者と連携してワイナリーに限定しないマルチワインツーリズムを考えているんだ。
実際、観光において山形ってかなりチャンスがあるんだよ。

おきたま新聞(スマイリー)
そうですか? 東京からと考えれば新幹線は使わなければいけないし…2時間もかかりますよ。

川邉部長
2時間で行けるっていうところに魅力があるんだ。 2時間で移動できる距離は小旅行として一番いい条件なんだよ。 移動でくたびれず飽きもこない時間で移動でき、楽しい時間を過ごせる場を提供できれば、絶対にまた呼べる距離なんだよ。 それにお客さんも遠くまで足を運んでいるから、買い物にもお金を使うでしょ(笑) 山形にはそういう強みもあるから、やり方次第ではファンの方を増やしていくことは難しくないよ。

おきたま新聞(スマイリー)
なるほど…逆転の発想ですね。 とても勉強になりました。
本日はお忙しいところお時間をいただき、ありがとうございました。
これからワイナリーを見学させていただいてもよろしいですか?

川邉部長
どうぞ(笑顔)

今回の取材に対応して下さいました川邉部長は、ワインに対する熱意がすごくて、話すスピードも早いんだ(驚)
おきたま新聞始まって以来の文章量だと思いますが、教えていただいた内容はこの更に倍ぐらいあるんだっし。

今回はワインについて心得のない私にまで懇切丁寧に教えていただき

ホントおしょうしなっし!

ということで、この後に高畠ワイナリーを見学させていただいたんだっし!
ちょっと長くなりましたので続きは次回。
今度はもっと写真を入れます(反省)ので、是非見ておごえな~。

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